金曜

相も変わらず書類を見つめては書き込むを繰り返していたプロデューサーが首を鳴らしたのは昼を少し過ぎた時だった。

「っあ〜ぁ」
コキコキと左右に首を曲げるとようやく書類から目を離す。

「ここまで練ればしばらくは対処できるかな、PVの案も幾つか出せたし」
散乱していた書類を整理して一箇所にまとめる。

「今日くらいは定時に上がろうかな…」
小鳥に言い放ってしまった事を心の片隅で後ろめたく思っていたプロデューサーは誰に言うでもなくそう呟いた。

「さてと、昼は何処にしようかな…」
プロデューサーが窓から下を見渡すと何処も人がせわしく行き交っていた。

「食堂も混んでるし…たまには美味いコーヒーでも飲もうかな」
プロデューサーはポケットの財布を確認すると事務所を後にした。

その頃、先に昼休憩に出ていた小鳥は注文を済ませコーヒーを啜りながらオープンテラスの席で人を待っていた。

「遅いなぁ…」
既に小鳥が席についてから10分が過ぎていた。

「たまには話そうって言うから早く来たのに」
ちびちびと熱く淹れられたコーヒーを飲みながら待っていると不意に前方から女性が声を掛けた。

「ごめ〜ん、小鳥待った?」
明るく謝辞を告げながら歩いてきたのは小鳥の待ち人だった。

「あ、千鶴。ちょっとね、お昼は?」

「今頼んでもらってるー」
小鳥が訊ねると千鶴は席に着きながらそう答えた。

「誰かと一緒なの?」

「うん、彼」

「そっか、彼か。彼ぇぇぇぇっ!?いつの間に…」
小鳥が驚いて見渡すと二人分の食事を持った男性がこちらに向かって歩いてきた。

「こっちこっち」
女性が手を振ると男性は食事をテーブルに置いて席に腰掛けた。

「紹介するね、和弘さん」
千鶴が紹介をすると男性は軽く頭を下げた。

「はじめまして」

「で、こっちが友達の小鳥」
同じ様に小鳥もちょこんと頭を下げる。

「はじめまして…ちょっと千鶴?」
ちょいちょいと小鳥は手招きをした。

千鶴は上半身を傾けて耳を小鳥に近づけた。

「(小声)自慢しに来たわけ…?」

「あたり」

「…はぁ」
小鳥は小さく溜息を吐いた。

(気まず過ぎるったらないわ…)
しばらく二人が食事を終えるのを小鳥はコーヒーを飲みながら待っていた。

二人はそれはそれは仲良さ気に談笑しながら食事をしている。

(何の為に呼ばれたのかしら…もう)
そんな事を考えていると食事を終えた千鶴がマグカップをを両手で持ちながら小鳥に声を掛けた。

「小鳥、最近どうなの?」
ズズッとコーヒーを啜る。

「ど、どうって?」

「良い人居ないの?」

「何よ、それ…全く」
小鳥が一口コーヒーを啜った時、既視感が走った。

小鳥の視線の先にはコーヒーと灰皿を片手に持ったプロデューサーが席を探していた。

「あ、プロデューサー…さん」
不意に目が合ったプロデューサーは小鳥を見つけるとこちらに向かって歩いてきた。

陽射しでプロデューサーの眼鏡が一瞬キラリと光を帯びる。

「音無さん、お疲れ様です」
笑顔で挨拶を交わすと小鳥の向かいに客人が居るのを確認して会釈をした。

「お疲れ様です、プロデューサーさん」
小鳥も笑顔で挨拶するとプロデューサーは空いていた小鳥の後ろの席に腰掛けた。

その様子をポカンとした表情で見つめていた千鶴が今度は手招きをした。

「(小声)あんな人うちに居たっけ…?」

「(小声)もう1ヶ月以上経つけど?」

「(小声)そっか、部署違いか…」
千鶴は悔しそうに呟いた。

「それよりさ、さっきの話だけどどうなの?」

「え…?」

「好きな人は居ないのかって話し」

「ちょ…!」
急速的に小鳥の体温が上昇する。

「どうなの?」
千鶴はしらっとした表情で続けた。

(あぁ…空気読めない子だなぁもう)
そう心の中で毒づきながら小鳥は後方が気になって仕方が無かった。

「い、居なくは…ないよ」
しどろもどろに小鳥は答えた。

「え〜、どんな人?」
好奇心に満ちた子供の様な表情で千鶴は畳み掛けた。

小鳥の珍しく浮いた話しに千鶴の探究心に火が点いてしまった様だった。

(何て事を言わせるのよ…!)

「い、一生懸命な人?」
喋っていく度に小鳥の声はボリュームを下げて行った。

間違いなく後ろに座っているプロデューサーに聞こえてしまっていると言う事実に小鳥は気が気でなかった。

しばらく俯いて質問攻めにあっていた小鳥が開放されたのは昼休みが終わる10分前だった。

気がつくと周りの席には人がまばらに座っているだけで小鳥達の周りの席は空いていた。

後ろに振り返るとプロデューサーの姿も見当たらなかった。

カップやトレイを返却口に返して小鳥は事務所の入り口で千鶴達と分かれた。

小鳥がデスクに戻ると既に隣でプロデューサーが業務に入っていた。

チラリと横目で覗くと書類は手にしていないもののやはり険しい表情をしていた。

少しの気まずい雰囲気の中、カタカタと小鳥の叩くキーボードの音だけが響いていた。

「音無さん」
不意に声を掛けられ小鳥はビクッと震え上がった。

「は、はい?」
恐る恐るプロデューサーに視線を移すと先程とは違いプロデューサーは柔和な笑みを浮かべていた。

「今日定時上がりですか?」
プロデューサーの言葉に小鳥は今やっている業務の進行状況を確認した。

「そう…ですね、この調子ならいつも通り終われそうです。プロデューサーさんは?」

「自分も今日は早く切り上げようと思って」

「そうですか」

「良かったら飲みに行きませんか?」
唐突なお誘いに小鳥は耳を疑った。

「え?」

「終わったら飲みに行きませんか?この前のバーに」
何時ぶりだろう?

いや、もしかしたら初めてなのかも知れない。

ストレートに男性からお誘いを受けるのは。

キュッと胸が締め付けられる思いを乗り越えて小鳥は返事をした。

「いいですね♪」

「良かった、じゃあ終わったら行きましょう」

二人は先日立ち寄ったバーに足を運んだ。

相変わらずの客入りの悪さに少し心配になったが当のマスターが笑顔を保てている内はきっと大丈夫なのだろうと小鳥は一人思っていた。

カウンター席に腰掛けるとマスターが話しかけてくる。

「いらっしゃいませ」

「来ちゃいました♪」
小鳥は笑顔と共に右手をトンと敬礼をする様に目の上に置いた。

「どうも、お久しぶりです」
プロデューサーも挨拶を交わすとマスターは会釈した。

「お久しぶりです。今日は音無さんと一緒なんですね」

「えぇ、自分が早く終われたのでお誘いしました」
そんな二人の会話をキョトンとした表情で小鳥は見ていた。

「いつの間に仲良くなったんですか?」
小鳥がマスターに訊ねた。

「この前お二人でいらした後に何度かお越し頂いてたんですよ」
そう言いながらマスターは注文もしていないのにグラスの用意を始めた。

「そうなんですかぁ」

「えぇ、ボトルも入れて頂いて」
準備の為にマスターが手にしたボトルにはプロデューサーの苗字の書かれた名札が掛けられていた。

「いつもので?」
マスターが二人に訊ねる。

「はい」
小鳥が答える。

「そうですね、あと―」
プロデューサーの言葉に被せるようにして小鳥が口を挟んだ。

「”マリアージュでチョコ”ですよね?フフッ♪」
小鳥が微笑むとプロデューサーも笑みを浮かべて言った。

「です」
マスターはそんな二人を見て微笑むと慣れた手付きで準備を終えた。

薄褐色の飲み物にまん丸の氷が入ったグラスと農紅色の飲み物が長く細いグラスに注がれて二人の前に置かれる。

「ありがとうございます♪」
「ありがとうございます」
手にすると二人は言い合わす事も無くグラスを軽く鳴らした。

「お疲れ様です♪」
「お疲れ様です」
二人してコクリと喉を鳴らす。

「はぁ、おいし♪」
小鳥は嬉しそうに目を細めた。

しばらく無言のままお酒の味を楽しんだ二人が2杯目に移った頃、時間は15分程過ぎていた。

徐々に体が温かになるのを小鳥は感じていた。

小鳥は2杯目を一口飲むと口を開いた。

「プロデューサーさんて、お酒強いのに甘党なんですね」
不意に話しかけられプロデューサーはチョコを持っていた手を止めた。

「あれ、言ってませんでした?」

「聞いてませんよ。でも分かっちゃいました♪」
「いつも見ていましたから」とは小鳥は言わなかった。

「うーん、可笑しいですかねぇ…」
チョコを口に含んでプロデューサーは考え込んだ。

「いいえ、そんな事はないですよ」

「それなら良いんですけど」

「あ、そうだ。聞き忘れてたんですけど」

「なんです?」

「プロデューサーさんてお幾つなんですか?」

「2?歳ですよ?」

「はい?」
小鳥は耳を疑った。

「もう1回いいですか…?」

「2?歳です」

「…」
小鳥はこの時、驚愕の事実を突きつけられた。

「歳下…だったんですね。プロデューサーさん」
雰囲気からして年上だと先入観で決め付けていた小鳥にはショックな出来事だった。

「あぁ、そうだったんですかぁ。でも」

「でも…?」

「音無さんとなら一緒に歩いてて鼻が高いでしょうね」

「なっ?…う〜」
言われて小鳥は赤面した。

普段社長の口から聞く言葉と同じ様な内容なのに相手が違うだけでこうも感じ方が違うのかと少し驚いた。

「なんか、恥ずかしいなぁ…」

「そう言えば…」
そこまで言ってプロデューサーは言い淀んだ。

「そう言えば?」
小鳥は怪訝そうに片眉を上げた。

「い、いえ…何でも」
プロデューサーの表情を見て小鳥は今日の事を言っているのかなと直感的にそう思った。

「今日の…お昼の事、気になりますか?」
小鳥の言葉にプロデューサーはギクリとした。

これが女の勘と言うものなのかと心底驚いていた。

「そう、ですね…」
無理のある台詞に小鳥は小さくクスリと笑った。

「気になる人は…居ます」

「…」

「だから、その。あの後千鶴…女の子が言った紹介してくれるって話は断りました…」
小鳥が俯きながら話しているのをプロデューサーは黙って聞いていた。

「…」

「だって、どんな人かも分からないし…それより」

「…」

「私は一生懸命頑張っている人の為に何かをしてあげたいって…思いますから」
そこまで言うと小鳥はグラスの飲み物を一口喉に通した。

合わせる様にプロデューサーもグラスを傾けた。

「音無さん」

「なんでしょうか?」

「この間はすいませんでした」
少しトーンを下げてプロデューサーは謝辞を告げた。

「この間…」
小鳥は思い出していた。

「木曜日…。その、あんな風に言うつもりは無かったんですけど…」
申し訳無さそうに言うプロデューサーに小鳥は小さく微笑んだ。

「いえ…私の方こそ。でしゃばってしまって…」
しばしの沈黙の中時折聞こえる氷の音がカランと響いた。

「音無さんが手伝ってくれたおかげで集中して練る事が出来ました」
持っていたグラスを見つめたまま小鳥は聞いていた。

「いえ…」

「事務の方も忙しいのに…手伝って貰ってしまって」
プロデューサーの言葉を聞いて小鳥は呟く様に話し出した。

「私…わたし…もっと力になれたら良かったんですけど」
そこまで言うと小鳥はカウンターにグラスを置いた。

「私の方こそ…手伝って、もら…て…かりで…」
プロデューサーが気に掛けてくれていた嬉しさと自分の無力なもどかしさに小鳥が堪えていた感情が一気に溢れ出てしまった。

「私が…ったしが、うく…。もっと、もっと仕事が出来れば…ひっ…ごめ、なさい…」

「音無さんが謝る事じゃ―」
小鳥に振り返ったプロデューサーは唖然とした。

いつも笑顔を絶やさなかった小鳥が涙に濡れた瞳を手で拭ってクシャクシャにしている光景を目の当たりにしたからだった。

それ以上言葉を出せなかった。

「疲れてても、いっしょけんめい…頑張って、うぅ。ねむく…も、徹夜して…。」

「…」

「でも…今の私は、何も…で…きなぃ…っ」

「…」

「プロデューサーさんの、お手伝いにならない!傍に居て何かしてあげたいのにぃ…」
その言葉は小鳥の想いを乗せてプロデューサーにはっきりと伝わっていった。

プロデューサーは不思議に思っていた。

何故こんなにもいつも声を掛けてくれるのか

いつも心配してくれるのか

いつも傍で微笑んでいてくれるのか…

パズルのピースがカチリとはまった思いがした。

小鳥の想いがいつも自分の事を見ていてくれていたのだった。

そしてその想いが少なからずプロデューサーの気持ちにも変化を生じていたのも事実だった。

「自分も…俺も…。俺が!ここまで頑張ったのは…自分の為でもあり、あずささんの為です…」
プロデューサーの言葉に一際強く涙が溢れ出る。

そう、自分の為じゃない。

「でも!きっと本当の理由は…」

「…」

「音無さんの、笑顔が見たかったからだと思います」

「…ぇ?」

「何時からかずっとそう思ってました…、音無さんの笑顔が見たいって。もっと喜ばせてあげたいって…」

「…」

「卑怯な言い方になりますが…音無さんが居なければとっくに挫折していたかも知れません。だから…」
そこまで言ってプロデューサーは言い淀んだ。

プロデューサーの喉がゴクリとうねる。

小鳥は高鳴る胸を押さえながら次の言葉を待った。

「音無さんさえ良ければ…これからも俺を支えて…下さい」
どっちとも取れる抽象的な物言いに小鳥は複雑な思いだった。

「…」

「あ、曖昧でしたね…今の」
プロデューサーは訂正すると「うん」と小さく喉を鳴らした。

「傍に居てください。その、仕事でも私生活でも…」
プロデューサーの言葉に小鳥の視界がふにゃりとぼやける。

自分の想いが伝わった事は確信できた。

それだけでも飛び回りたい程嬉しかったが肝心の言葉がまだ聞けていない。

「そ、れって…」

「…」

「…」

「音無さんが…好きです」
聞いた瞬間、小鳥は手で顔を覆った。

じわりと甘く温かい気持ちが胸を込み上げてくる。

「うぅ…ひく…」

「音無…さん?」

「やっと…」

「やっと?」

「やっとっ…聞けた…。初めて…初めて、想いが伝わった…」
嬉しさで涙が止まらなかった。

小鳥はポロポロと溢れ出す涙を必死で拭っていた。

「あれ?…おかしいな、涙が止まらないな。嬉しいのに…笑いたいのに」
グシグシと子供の様に目を擦る小鳥をプロデューサーは静かに見つめていた。

店内には緩やかなBGMと小鳥の声だけが静かに鳴っていた。

しばらくしてようやく落ち着いた小鳥が顔を上げる。

「ごめんなさい、マスター。お騒がせしちゃって…」
小鳥が言うとマスターは悪戯っぽく苦笑した。

「いえ、他にお客様はいらっしゃいませんから」

「プロデューサーさんも、ごめんなさい」

「落ち着きました?」

「はい、ちょっと目が腫れちゃってますけど…」
照れ隠しにクスッと小鳥は微笑んだ。

その表情はいつもの笑顔より少し穏やかに見えた。

「それじゃそろそろ出ましょうか?」
プロデューサーの言葉に小鳥が頷く。

チェックを済ませ外に出ると外はすっかり冷え込んでいた。

寒気が素肌に触れて熱を奪っていく。

小鳥がはぁっと息を両手に吹きかけると白い息が舞い上がった。

「冷えますね」

「そうですね」
駅に向かって歩き出すプロデューサーの後に続くように小鳥は歩き出した。

特に交わす言葉も無くただじっと小鳥はプロデューサーの背中を見つめながら歩いていた。

今頃になって恥ずかしさが込み上げてくる。

さっき確かに聞いたはずの言葉が夢の様な感じさえしてきた。

何度でも確認したい気分だった。

「あ、あの。プロデューサーさん」
小鳥の呼びかけにプロデューサーが振り返る。

「どうか、しました?」

「さっきの…嘘じゃないですよね?」

「さっきの…」
プロデューサーは照れ臭そうに頬を掻いた。

「夢とかじゃないですよね…」

「嘘とか夢じゃない…はずです。自分も同じ思いのはずですから…」

「ずっと、傍に居てくれますか…?」

「自分の方が放って置けませんよ」
はにかみながらプロデューサーは言った。

「本当?」
俯いていた小鳥が顔をあげプロデューサーを見つめる。

「音無さん…?」
プロデューサーの視線が小鳥の視線と交差する。

一瞬考える様に細めた目が鋭く小鳥の瞳を捉えた。

それでも小鳥は真っ直ぐプロデューサーを見つめていた。

ふっとプロデューサーの表情が和らぐ。

「本当です。嘘は言いません」
その言葉には固い決心の様な物が込められていた。

「じゃあ…態度で、証拠を見せてください」
言った小鳥は頬が紅潮してくるのを感じていた。

「態度ですか…」
コクリと小さく頷くと小鳥は瞳を閉じて心持ちあごを上向けた。

「っ!?」
プロデューサーの息を飲む音が聞こえた。

小鳥の動作が何を意味するのかプロデューサーは瞬時に理解した。

驚きを隠せないプロデューサーに気付く事も無く小鳥はただただ待ち続けた。

気持ちも落ち着かない。

恥ずかしさの所為で微かに体も震えている。

プロデューサーの足音が一歩、二歩と近付くと閉じた瞼の上から街灯の微かな明かりさえも遮られた。

胸の鼓動が際限なく高鳴っていく。

小さな息遣いが頬に触れた。

「んっ…」
柔らかな感触と共にプロデューサーの唇から微かな体温が伝わってくる。

ほんの一瞬重ねた唇が痺れた様に感覚を失った。

ゆっくりと瞳を開くとそこにはプロデューサーの少し恥ずかしそうな笑顔があった。

「これで…安心してもらえました?」
小鳥はコクンと頷くと照れ隠しに不意に走り出した。

クルッと振り返り体をくの字に折った。

そして頬を赤らめたままいつもの笑顔をプロデューサーに向けた。

「これからも、一緒に居てくださいね♪」

月曜日

「おはようございます」
プロデューサーが出社すると同時に小鳥が給湯室からコーヒーをトレイに乗せて戻ってきた。

「あ、おはようございます♪」

「お、おはようございます。音無さん」

「プロデューサーさん、ちょっと」
小鳥が手招きするとプロデューサーは耳を寄せた。

小鳥は踵を上げてプロデューサーの耳に口を近づけた。

「(小声)小鳥って呼んでください♪」

「えっと、その…小鳥、さん…」
言い難そうにするプロデューサーの照れた顔を見ると小鳥は嬉しそうに微笑んだ。

「あ、ネクタイ曲がってますよ」
キュキュッとプロデューサーのネクタイを締め直す。

「フフッ♪」

「あ、ありがとうございます。おと…小鳥、さん」

「今日も頑張りましょうね!」

「はい」

「あ、そうだ!」

「?」

「今日はお昼一緒に行きましょうね、コーヒー屋さんに♪」
小鳥は嬉しそうに目を細めた。

今日も一日が始まる。

いつもの光景

いつもの喧騒

いつもの環境

そして、いつもの彼

生まれ変われた自分

今日も一日が始まる。

空に雲が形を変えて緩やかに浮かぶ様に。

小鳥の気持ちは青く透き通った空を羽ばたいていた。

<只今社内恋愛CHU!> −I doing. Office Love−

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